「栄養の日・栄養週間 2022」市民公開講座「栄養の日・栄養週間 2022」市民公開講座

第43回 健康づくり提唱のつどい
「サステナブルに食べる」って
どういうこと?
~人にも地球にもやさしい持続可能な栄養とは~

2022年8月1日(月)、「栄養の日」のスペシャル企画として、「第43回 健康づくり提唱のつどい」が開催されました。これは日本栄養士会がおよそ40年に渡り、市民に栄養などに関する知識を広める場として取り組んできた市民公開講座です。今回のテーマは「サステナブルに食べるってどういうこと?」。2部構成で行われ、第1部ではタレントの高橋みなみさんをお招きし、日本栄養士会の鈴木志保子副会長、MCの川口あいさんとともに、多岐にわたるトークが展開されました。

第2部「“サステナブルに食べる”と腸内環境の熱い関係」のレポートはこちら

“サステナブルに食べる” とは、今と未来の自分を繋げていくこと

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鈴木副会長は「”サステナブルに食べる”ということを1日だけで考えれば、フードロスの削減などはピンと来ると思うのですが、1週間、1ヶ月、1年、10年後、20年後の将来を考えるときに、持続可能に食べるというのはどういうことか、知っていただけるとうれしい。そこに栄養がすごく関わっています」と語ります。
これには、「食べるってすごく自分ごとで、サステナブル、地球環境、社会のこととの関係がイメージしづらいと思っていました」 と川口さんも同意。

「持続可能な自分でいるためには健康維持が一番、でもそれが一番難しい。そこで言うと、世の中が便利になればなるほど、普通に食べることができなくなったという問題もあります。」と鈴木副会長。

「とても深い言葉だと思いますが、どういう意味が込められているのでしょうか?」と高橋さんが尋ねると、「高橋さんは今まで一生懸命活動されてきたと思いますが、何に優先順位を置いて、何を優先して食べていくかによって、身体は変わってきたはず。その蓄積が、自分の将来にどんな影響があるのかなと考えることが必要です」これに対し、「栄養を摂ることが、今と未来を繋げていくのですね」と高橋さんも納得した様子。

高橋みなみさんの食生活から考える

画像②左:高橋みなみさん、右:鈴木志保子副会長

ここからは、鈴木副会長が高橋さんの現在と過去の食生活に鋭く切り込んでいきます。
2019年に結婚し、タレントとして多忙な毎日を過ごすなかでも週3日ほど料理をするといい、レシピ本も出版している料理好きの高橋さん。川口さんから「ご結婚されて普段の食生活は変わられましたか?」と聞かれると、「夫が仕事柄、会食が多かったりとか、お酒が好きだったりするので、家で食べるときは和食で野菜中心に品数多めで、みたいなことはすごく意識してます。」とのこと。

「野菜は意識しても摂りにくいからとても良いことだと思います」と高評価の鈴木副会長。さらに「その他に意識していることは?」と尋ねられると、高橋さんは「色ですね」と即答。「いわゆる"映え"ではないのですが、野菜が大事だからと言って、緑が多すぎてもきっとバランスが良くないから、黄色だったら卵、赤だったらパプリカを足すとか心掛けています」

続いて、話題はお肉へ。まず、お肉というのは「ほどほどに食べる」がポイントなのだと鈴木副会長。 「グラムで言うと、お肉50gに含まれるたんぱく質は10g。実は自分の体重(kg)ぐらいのグラム数を摂ればちょうどいいのですが、一日全体で摂ればいいと考えれば、それほど大変じゃないのかなと思います。」
これには「とにかくたくさん食べたほうがいいイメージがあった」と、高橋さん、川口さん両名がコメント。
鈴木副会長は「そこに社会とのギャップがあって、目とか頭で求める肉の量ではなく、自分の身体が本当に必要な量を意識して、サステナブルに食べることを心がけるのが大事」と述べました。

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さて、高橋さんのAKB48時代の食生活はどのようなものだったのでしょうか。フリップを掲げた高橋さん。朝は食べないか、スムージーを飲むか。お昼は現場で出るお弁当。夜は疲れてすぐ寝てしまうので食べない、というもの。
「今見るとすごく不健康だなと自分でもわかるのですが、当時はアイドルという人に見られる仕事なので、痩せていても、もっと痩せたいと。10代後半の頃はジュースクレンズが流行していたので、3食ジュースクレンズで固形物を食べない。一方で、疲れて帰ってきて、突然ポテトチップスを一袋食べるみたいな、とんでもない食生活をしていましたね」「それでも若さと精神力で生きていけていた」と高橋さん。
これに対し、鈴木副会長は「目指しているものがあると、脳が身体に優先して判断がつかなくなる」と分析。さらにこう続けます。「そういう生活をしていると痩せてはいくけど、ガリガリにはならない。なぜかといえば、エネルギーを蓄える素が脂肪で、それを落としたら死んでしまうから、身体は筋肉を先に落としていくのです。相対的エネルギー不足という考え方があります。例えば一日2000kcal必要なのに、いつも1800kcalで生活しているとマイナス200kcalですよね?そのマイナス200kcalが続くと、身体が全体の機能を落として調整を始めてしまいます。コロナ禍の今、免疫機能を落としてしまうそのようなリスクは尚更避けたいですね」

リバウンドしない、サステナブルなダイエットとは

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ここで高橋さんが「今の話のように、2000kcal必要な人が1800kcalを続けて身体が節約モードに入ってしまった場合、そこから2000kcalに戻したら身体はちゃんと健康に戻るものですか?」と質問。これに対し鈴木副会長は「一気に2000kcalに戻しちゃうと、身体が節約モードになっているから200kcalぶん貯蓄しようとします。これがよくリバウンドって呼ばれるものです」と、世のダイエッターたちが苦戦するリバウンドの仕組みを明らかに。
「ダイエットした後にリバウンドしてしまうっていうのは、それはもう身体が死にたくないから、蓄えることを優先してしまうから。この場合は例えば、20kcalずつ増やして、ちょっとずつ体に馴染ませる。20kcalぐらいだったら貯金しないで使っちゃおうかなって思いますよね。そうして2000kcal必要な身体に戻していけば、2000kcal食べても太ったりしない」と続けました。

これには高橋さんも「身体って面白いですね!」と目からウロコ。鈴木副会長も「面白いでしょ? 管理栄養士ってそういうことをやっているんですよ」と胸を張っていました。

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ここで川口さんから「健康的に痩せたいなって思った時は少しずつ摂取カロリーを減らしていくって感じですか?」 と質問が。
鈴木副会長は、「例えば体脂肪率が30%前後の、痩せる貯金がいっぱいある人だったら、1ヶ月1キロペースぐらいがちょうど良いですね。まずは朝一の排尿後に体重を量ることから、自分を知ることを始める。自分を知らずして何かやっても意味がありません。自分で自分のことを考えられなくちゃいけないと思います。無理なダイエットというのは、将来に向けてサステナブルじゃないのです」 と答えました。

これまでの話を受けて、さらに川口さんから質問。「身体の声を聞きながら、サステナブルに身体像を作っていくにはどうすればいいですか? 」
ここで鈴木副会長が持ち出した例えは、学校の給食。「あれは一つの理想形です。 比較的お肉少なめ、野菜多めで、どちらかというと野菜でご飯を食べていた感じでしょう?乳製品もちゃんと付いていて。給食みたいな形をイメージするのは、自分の摂りたいものをほどほどにとりつつ、バランスよく食べるということが最もやりやすい方法論のひとつですね。あくまで方法論のひとつなので、例えば、高橋さんが飲んでいたスムージーの中にプロテインを少し加えるというのも一つの手段。こういうふうに頭を使えば、栄養状態をしっかり整えるということができるようになります」

この辺りで、第1部のトークもいよいよ締めくくりへ。
川口さんから、「毎日の食事にちょっとずつ気を付けるということは自分のため、そして地球のためにも大切だということで、鈴木先生、合っていますでしょうか? あと、サステナブルな身体作りというと、消化吸収の良い状態をどう定着させていくかみたいなところもすごく重要なのかなと思うんですけれども」

「その認識で合っています。消化吸収を担う胃とか小腸って筋肉だから、年齢とともに衰えていくものですね。痩せにくい体質っていうのも、そこに関係しているかもしれないですね、運動すると改善したりするので」と鈴木副会長は述べました。

“腸活”の話題を受けて、イベントは第2部へとバトンタッチ。第2部では、「“サステナブルに食べる”と腸内環境の熱い関係」と題し、乳酸菌飲料ヤクルトでおなじみのヤクルト本社学術広報担当の有馬直美課長をゲストに招き、腸の健康についてトークしました。

第2部「“サステナブルに食べる”と腸内環境の熱い関係」のレポートはこちら